アニメ「かげきしょうじょ‼」が描いた理想と、ミイヒらが示す現実。『痩せ姫』刊行5周年に思うこと【宝泉薫】
そこで連想するのが、アンデルセンの童話「人魚姫」である。このヒロインは人間への憧れや執着のために、声と人魚としての幸せを失い、そのかわり、歩くたびに痛む脚と王子に愛されなければ死ぬという運命を得る。不幸にも思える選択だが、自らが決めた生き方に殉じたからこそ、彼女の物語は哀しいほどの美しさを持つにいたった。
痩せ姫もまた、そこに通じる存在かもしれない。その哀しくも美しい葛藤を伝えたいという想いは、5年前も今も、いや、ますます高まるばかりだ。
もちろん、これは世の中全体に共有されるものでもないだろう。ただ、完全に無視されることもないはずだ。健康でありたいと願いつつ、不健康にも惹きつけられるのが人間だからである。
そのアンビバレントな本質を象徴する痩せ姫は、誰よりも人間らしい葛藤を生きている。
文:宝泉 薫(作家・芸能評論家)